前回に引き続き、絆 社会保険労務士事務所のテーマの一つでもある「非正規雇用の為の助成金」と言えるキャリアアップ助成金の一つでもある短時間労働者(パート労働者)の週所定労働時間延長コースを御紹介いたします。現状人口減少社会であるため労働力全体は当然減少しています。しかし非正規雇用は反比例して増加しています。結論から言えば全体が減少しているなか、正規雇用の減少幅が非正規雇用の増大幅より大きいこととなります。その縮小してゆく労働環境もただ縮小してゆくのではく、労働争議の増加が社会的に取り上げられ企業の経営者や担当者としては少しでも明るい話題を社員に向けたいと感じておられることと思います。私はそんな時こそ「助成金」を活用すべきではないかと考えます。ただし当ページでは、この助成金を実際の金額をもちいて企業側と労働者側双方が注意すべき点も同時に述べさせていただきます。
概要
週所定労働時間25時間未満の有期契約労働者を週所定労働時間30時間以上に延長した場合の助成金です。
賃金例 時給800円として週30時間とすれば以下のように賃金の差がでます
現週25時間の場合
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金 額 |
計 算 |
週 間 |
20,000円 |
時 給 800円×25時間 |
月 間 |
80,000円 |
週 20,000円× 4週間 |
年 間 |
960,000円 |
月 80,000円×12箇月 |
週30時間にすると
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金 額 |
計 算 |
週 間 |
24,000円 |
時 給 800円×30時間 |
月 間 |
96,000円 |
週 24,000円× 4週間 |
年 間 |
1,152,000円 |
月 96,000円×12箇月 |
助成金支給額
1人あたり10万円(大企業は7万5千円)
(短時間正社員コースの人数と合計して1年度1事業所10人まで)
展望と注意すべき点
上記のモデルだと短時間労働者の賃金の年間差額は1,152,000-960,000=192,000円となり、この増加は、これから消費税の増額や物価上昇も視野にいれればうれしい話ともなるでしょう。ただ所定労働時間を30時間以上とすることは会社に社会保険加入義務が発生します。当然保険料の負担が発生します。上記の賃金ですと保険料(厚生年金/健康保険)月約26,000円を双方で折半することになります。また上記労働者は年間所得が1,030,000円を超えてしまうため所得税の基礎控除が適応されなくなります。これだけ見ればなんかあまりいい制度とは言えなくなってしまいます。しかし前段でも述べましたように労働環境は、労働人口問題や労働条件の改善等問題山積です。テレビのコメンテーターは問題点ばかりあげ、解決策はものすごい上段から見て発言していますし、実現は程遠いでしょう。実際、手取り賃金の上昇はモチベーションの向上と相まって売上増や生産性の向上となります。それは人の心を豊かにし、将来受け取る年金の増額は社員の将来への希望ともなるはずです。私は、例えば3号被保険者の保険料ゼロや企業の正規雇用をいかに増やしていくか等の問題点ばかりを論じるより、このような助成金を使って活力ある人をどれだけ増やせるかを考えてゆくほうが企業にとって現実的ではないかと考えます。
基礎控除の適用条件(参考)
基礎控除(一律38万円)+給料所得控除(最低65万円)=103万円
となりますので、給料所得が103万円以下であれば、結果的に所得税額が「0円」となるのです(住民税は100万円以下)。